野鳥カルテ  



2007年 1−3 




2006年 1−3 4−6 7−9 10−12
2007年 1−3 4−6 7−9 10−12
2008年 1−3 4−6 7−9 10−12
2009年   1−6   7−9 10−12
2010年 1−5   6−8     9−12 



ヒヨドリ    3月29日
ドバト     3月28日
キジバト   3月17日
タヌキ     3月13日
ドバト     3月5日
キジバト   2月21日
メジロ     2月2日
ユリカモメ  2月1日




ヒヨドリ
3月29日


今度こそ来た時に、と思いつつ写真を撮りましたがピンぼけ。食欲もあり、元気だったのであとで撮りなおそうと思っていたら急に亡くなりました。残念ながら死亡後の写真です。


とう骨の骨折です。上腕骨から広範囲に腫れています。
手術適応ではないのでこのまま固まるのを待つか、包帯で固定するか迷いました。翼を下げており、翼の先端が止まり木に当たったり糞で汚れるので固定を試みることにしました。包帯法は得意でないので何度か付けたりはずしたり。その負担で、内出血を憎悪させた可能性があります。

医療に、「もし」という言葉は無意味なんですが、もし断翼すれば生きていたかもしれません。かといって、野鳥という立場を考えると、やっぱり少しでも可能性があれば野生復帰できる道を探すべきでしょうし。

猛禽類の研修を受けた時、最初の段階で野生復帰の可能性を考えて治療するかしないか判断する、と言ってました。断翼などは考えていないそうです。大型の鳥なので片翼になった場合、バランスが取れないなどで、足に負担が来るからだそうです。小鳥類の場合、餌付きさえすればとりあえずは命は長らえられるので、「とりあえず」治療を始めてしまうケースが多いです。




ドバト
3月28日


またまた写真を撮るのを忘れて、レントゲンしか残っていません。
ドバトの上腕骨骨折です。ネットを通じて、ずいぶん遠くから連れてきて下さいました。

関節が関係した複雑骨折です。正直、手術してもまず無理でしょう。どうしたらよいか聞かれて、引き取ったら安楽死する、って伝えました。積極的に殺せなければ河川敷などに置いてきて鷹類に食べてもらうか。都市公園で、隠れるところがあれば飛べなくても生きていける可能性はあるかも。

放せない鳥をどうするかは永遠の問題でしょう。某市は立派な救護施設を持っていて、どんなケースでも安楽死しない方針だそうです。結果的に飛べないドバトやスズメ、ツバメが飼育スペースを埋めているそうです。税金と貴重なスペース、人材を使ってそれらを死ぬまで飼うというのもなんだかなあ、とも思うし、私みたいにコチョウゲンは生かす、ドバトやサギ類は殺す、あるいは飛べぬまま放鳥するというのもいいかげんとも思う。

結局は野鳥救護活動自体が自己満足の世界、とも感じています。




キジバト
3月17日


キジバトのヒナが来ました。
外傷と大腿骨の骨折。なすすべもなく、翌日に死亡しました。
まだ寒いのに繁殖してるんですね。キジバトは年中繁殖するそうです。
普通の写真を取り忘れました。レントゲンだけでご想像下さい。折れている場所もご勉強なさって下さい。




タヌキ
3月13日


後ろ足が立たないタヌキを保護した、という電話がありました。後躯麻痺はほとんどが脊髄の骨折です。脊髄の骨折なら安楽死しかありません、と返事をしつつ、ご来院を待ちました。
確かに立てません。が、足の反射はわずかにあります。レントゲンを撮ると脊髄ではなく、骨盤骨折と仙椎の骨折でした。



翌日、犬舎の網をかじるほど元気が出てきたので15日に骨盤骨折の手術を予定しましたが、手術予定当日に亡くなりました。剖検により尿道の断裂を確認しました。
腹部外傷で一番怖いのはいわゆる内臓破裂、肝臓が傷ついていたり、腹部の血管が切れていたり。一番多いのは膀胱破裂。

最初のレントゲンで膀胱の像がないのは何となく気にしていましたが、尿道の断裂までは想像しませんでした。こういう野生動物は噛みつきに来るので、血液検査などを省略してしまうことがあります。膀胱と尿管を最初の段階で確認しなかったのはABCのAを忘れたようなもの。猛反省の症例でした。(結果的には、ちぎれ方を見ると早期に発見しても対処出来なかったとは思いますが。)




ドバト
3月5日


ドバトが来ました。ずいぶん遠くから連れてきて下さいました。ありがとうございます。

近くの獣医さんで、救護対象ではないって断られたそうです。獣医師会でもドバトの治療費は出ません。
まあ、外来種ですし公衆衛生上の問題もあるので原則的にはそうかもしれませんが、善意のこういう保護をどうするのかはむつかしい。今さらこの子を駆除、あるいは治療して放鳥したところで都会のこういう生態系にはなんの影響もないと思います。ただ、病気やけがも含め、飛べないドバトは探せば公園などにはいくらでもいると思います。それらをみんな連れてこられるようになれば、うちでも断るようになるでしょうねえ。

翼を下げています。レントゲン的には異常がない。翼だけではなく、若干、体も左に傾くので神経系の問題もあるのかもしれません。血液生化学には異常がありません。

単純な外的要因なら2,3日で治るはず。神経症状が顕著になれば安楽死、かなあ。

*10日ほどで飛べるようになり、放鳥しました。



キジバト
2月21日


けがをしている、とのことで連れてきて下さいました。
外傷は翼角にちょっと出血があるくらいで軽いものでした。左側の初列、次列風切りがありません。尾羽も3枚ほどしか残っていません。猫か何かにやられて抜けてるようです。ハトの羽は特に抜けやすいようです。ショックアブソーバー、トカゲのしっぽ切り、みたいなモノなんでしょう。
ただ、風切りは1/5ほど、はえかけていますので
「事故」があってから何日かは経過しているものと思われます。傾きながらも飛ぶのは可能です。
しばらく飼って、羽がもう少し伸びれば放鳥の予定。

*放鳥しました。



メジロ
2月2日


来るときは続くようです。とりもちについたメジロ、しかも3つです。
庭にミカンを置き、メジロを呼んでいるとか。一方、ネズミがいるのでとりもちを置いているらしいです。風でミカンがとりもちの方に転がり、それを食べに来たメジロが捕まった、そのメジロを助けようと思った仲間がさらにひっかかった、との説明でしたが、仲間を助けに来た、というところがほんまかいな?と思ってしまいます。

さらに、洗剤で洗ったとかいう話。中途半端なことはしてくれない方が助かるんですけど。


とりもちは天然ケイ酸アルミニウムで取ります。
体中粉だらけにします。間違って油で揚げないようにご注意ください(って、誰もするわけないか)。

なるべく羽は抜かぬように。


ということで、治療はほぼ完了。

メジロもネズミもふつうの野生動物なんですけどねえ。片一方は給餌され、片一方は駆除される。なんでこんなに待遇が違うんでしょう?
室内ならまあ仕方ないけど、屋外のネズミまで捕獲する必要があるんでしょうか?

*翌日、放鳥しました。



ユリカモメ
2月1日


見るなり、こりゃ無理、と思いました。


麻酔をかけて診ると想像の通り、骨折して翼が回転しています。上腕骨近位の開放骨折です。
はさみでちょん切って皮膚を2針縫う。3分で終わりました。

うーん、かわいいんですけどねえ。

*都市公園の池に放鳥しました。こういう鳥を放鳥していいのかどうかの議論はとりあえず置いておいて。