野鳥カルテ          


2002年  10−12


2001年 9−12
2002年 1−3 4−6 7−9 10−12
2003年 1−3 4−6 7−9 10−12
2004年 1−3 4−6 7−9 10−12
2005年 1−3 4−6 7−9 10−12






カルガモその後 12月29日
ホシハジロ    12月27日
ハシブトガラス  12月21日
ツグミ       12月9日
カルガモ     11月6日
ジョウビタキ    10月24日
キジバト      10月16日
キビタキ      10月



カルちゃんのその後
2002年12月29日


その後の経過をお知らせしていなかったカルちゃんです。
骨折中央部はきれいにくっつきましたが遠位側が再骨折し、残念ながら断翼しました。
こわがりでいつもケージの隅でじっとしています。1日1回、掃除のために外に出したときだけガーガー鳴いて抵抗します。
飛べない水鳥が長期間、都市公園の池などで観察されることがありますし、以前にも断翼したカルガモを都市公園のアヒルのいる池に放したことがあります。飛べないという点ではアヒルも同じと思いましたがその後の姿は確認はしていません。
このカルガモもいずれ放鳥と思いながら何となく飼育期間が伸び、安楽死か放鳥か悩みつつ、自宅にスペースがあったのでとりあえず野生復帰の練習?、”放牧場”を作ってみました。
病院にはなかった池を置くと早速浮かんでいました。やっぱり水鳥には池が必要です。
人の姿を見ると逃げますが、陰からみていると結構歩き回っています。このまま飼うのが幸せなのかどうかわからぬまま、同じ境遇の(?)タヌキの横で新生活を始めました。
近日中にはウズラのウズちゃんに同居をお願いするつもりです。







満身創痍のホシハジロ
2002年12月27日


警察に保護されたというホシハジロが役所を通じて来ました。
片足が不自由で片翼に傷があります。レントゲンを撮ると関節が変形しています。そのため翼が伸びません。さらに反対の翼の尺骨には骨折の治癒痕(自然に治ったあと)、鎖骨の骨折、おまけに散弾が5個ありました。
大阪府でも猟(猟期は11月15日から翌年2月15日までです。参考までに)が可能なところはあちこちにありますし、ホシハジロは狩猟鳥ですので狩猟自体に問題はないでしょう。ただ、こういう半矢(手負いのことをこういいます)の状態が一番かわいそうです。

比較的表面にあった2個の弾は摘出しました。残りは深いので試みませんでした。もっとも、筋肉に残った鉛弾は鳥自体には危害を及ぼす可能性は低いです。この鳥を鷲鷹が食べたときに、鉛弾が鷲鷹類の胃内に取り込まれるとそれが胃酸で溶けて鉛中毒を発症する可能性が出てきます。弱った鳥は獲物になりやすいでしょうし。

鉛弾は完全に取り込まれており、骨折部の状態からも考えて受傷後3週間以上は経過していると思われます。陸と違い、水の上では野犬等におそわれることもないでしょうから飛べなくても生きて行けそうです。実際、某氏の話では数年間、飛べない(と思われる)ホシハジロが暮らしている池があるそうです。
ホシハジロは水にもぐって採餌するカモです。陸を歩くのは得意ではないし、特にこの子は片足が不自由です。ちょっとペットには向かないでしょう。
最終的には上記の池に放鳥する予定です。

片足が不自由。 頭部から取り出した銃弾。



       


ハシブトガラス
2002年12月21日


上腕骨の骨折ですでに10日以上経過しています。
骨折部は上腕骨の中央でしかも斜骨折(斜めに折れている)なので、ケースによれば比較的治る骨折なんですが、開放骨折(骨が皮膚の外に飛び出している)だったのと、腫れと出血がひどく、傷が化膿していたので残念ながら断翼しました。

実はこのカラス、別の獣医さんで安楽死を勧められていました。保護者が、安楽死するぐらいなら自分で飼う、との条件で数日の入院の後引き取られ、安楽死をまぬがれたそうです。インターネットをごらんになり当方に来られました。

野鳥救護においては救護すべきかどうかのジレンマが常にあります。このカラスも初診でうちに来れば、可能性が少しでもあれば、たぶん骨折整復手術を試み、もし骨がくっつかなかった場合は断翼せざるを得なかったでしょう。その時点で新しい飼い主が見つからなかったら最終的に安楽死せざるを得ないと思います。
ただ今回のケースは最初から保護者が飼育を申し出て下さっているので、最初から断翼しても良かったのかもしれません。

完全に野生に戻れるかどうかを治療する、しないの判断基準にするならば、野生動物救護の活動自体がナンセンスになります。いったん人の手に落ちた鳥がその後天寿を全うしているかどうかはかなり疑問ですし、放鳥する鳥に足環を付けるなどの追跡調査も全く行われていません。
私が放鳥した鳥のうち何%かはその後数日のうちに死亡していると”確信”しています。
どうせ死ぬのなら救護するな、と言ってしまえばそれでおしまいです。

救護活動の根本は生命です。片一方で何十万羽駆除されているハシブトガラスですので、目の前にいる”ハシブトガラス”を助ける意味はないかもしれませんが、”この命”を助ける意味は十分あると思うのですが。



ツグミ
2002年12月9日


岸和田自然資料館から来ました。路上で保護されたそうです。
元気そうですが口がきっちり閉まりません。下顎骨の根元の方が折れていました。おそらく何かにぶつかったのでしょう。
熟した柿をもらっていて、そこに頭をつっこむので頭全体の羽が「こてこて」になってしまっています。
元気なら2週間ほどである程度骨がかたまると期待していましたが、残念ながら数日で死亡しました。その間も結構食欲はあったそうですが。
野鳥救護の第1は餌付けなんですが食べてても死ぬケースはよくあります。



メジロ♀
2002年11月7日

救護ではありませんがきれいでしたので掲載しました。
うちの奥さんが公園で拾って来ました。
これぐらいのサイズなら最近は30分ほどで仮剥製を作れるようになりました。




カルガモ
2002年11月6日


知り合いの先生からお預かりしました。I先生、ありがとうございました。
翼(上腕骨)の骨折ですが、2ヶ所折れており、1ヶ所は90度曲がっています。すでに折れたままくっついてしまっています。すなわち事故後、2,3週間は飛べないまま過ごしていたことになります。その割にやせていないので食事はあたっていたのでしょう。

手術して整復を試みましたが完全にくっついていてはずすのに一苦労しました。おまけに新生骨が変なところに出てきており骨折部がきれいに合いません。また、筋肉が萎縮していて手術後も翼が十分伸びませんでした。
後は経過を観察しつつ、ペットとして生きる道を探るか、どこかアヒルのいる池に居候するか考え中です。
もちろん手術した以上、大空に羽ばたくよう祈っていますが。




ジョウビタキ♂
2002年10月24日


大阪のど真ん中でオフィスに飛び込んできたそうです。
あちこち問い合わせて遠いところをうちまで来て下さいました。ありがとうございました。
が、お預かりして2,3時間で死亡してしまいました。残念です。
かなり痩せていました。飛び込んだ時点で弱っていたのかもしれません。
下記のキビタキと違って今回はりっぱな♂で、すごくきれいでした。

きれいな♂ 酸素吸入と保温をしたのですが。




キジバト
2002年10月16日


久しぶりに野鳥が来ました。
キジバトです。一見すると大人のように思いましたがよく見るとヒナの毛が残っています。
外傷があり、咬傷のようでした。縫合しましたが、傷は小さいように思いましたが翌日死亡しました。
巣立ちがうまくいかなかったのでしょうか。


キビタキ♀
2002年10月


メールで問い合わせを頂きました。建物への衝突のようです。
渡りのシーズンは建物での事故が多いです。
普通、一晩たてば飛ぶ子は飛ぶし、残念ながら、だめな子はダメです。この子は2晩頑張ったようですが死亡しました。
保護された方も一生懸命でしたが基本的に安静しかないのでじっと見守るしか方法はありません。
足を投げ出して羽を不自然に広げているので頭部に何らかの損傷がありそうでした。

メールでは”ウグイスですか?”とありました。
この種の鳥を保護された方は”ウグイス”と思われる方が多いようです。
この鳥は”ウグイス色”ですが、”ウグイス”は”ウグイス色”ではないのです。(もっと茶色い。)また、たいていの本は♂を最初に掲載するのでわかりにくいのでしょう。