ツグミの仮剥製                              


まず、各種測定をします。測定部位、方法はいろいろあるようですし、測る人が違うと数字も変わる可能性がありますがまあ、自分なりに統一した方法で測って下さい。
外部寄生虫もこの時点で探すといいでしょう。ハジラミは結構付いています。

   
  用意するもの
   外科用ハサミ、ピンセット、メス、
   ノギス、記録用紙、綿花
   針付きの糸、ホウ酸、たけひご、
   その他、ご本人


胸を開きます。最終的に羽毛で隠れますので慣れるまでは大きく開いた方がやりやすいです。
メスで切開、皮膚と筋肉は私ははさみで分離していきますが爪楊枝などの木ぎれ、メスなどで分離する人もありますし、大きな鳥では指で分離できます。くれぐれも穴を開けないように。穴を開けると羽毛が内側に出てきて裏表がわからなくなってきます。私は穴が空いたらすぐに縫合しています。うちには外科用の糸付きの針があるのですが一般的には手に入りにくいでしょうね。縫い針をU字型に曲げればいいのでしょうか。
切った皮膚の内側や筋肉に新聞紙を張り付けて羽毛をよける方法もあります。羽毛の汚れ防止です。防腐を兼ねてホウ酸の粉をふる場合もあります。

肩の関節で羽と胴体を分離します。関節には丈夫な靱帯が取り巻いています。外から羽を動かしながら関節部を探り、メスで切開します。鳥によっては(カラスなど)肩の位置がやけに遠くて分離しにくいものがあります。遠山の金さんみたいに肩袖を脱いで肩を出すと切断しやすいけどこの表現でわかるかなあ。
乱暴なやり方では、小さな鳥では上腕骨をはさみで切る人もありますが、いよいよ困った、最後の最後の手段です。

胸の切開 剥離を肩まで広げる

右の肩がはずれたんですが、わかるかなあ。


両肩をはずしたら次は首、胴体に近い部分、できれば関節部ではずします。私は小さい鳥ならたいていはさみでちょん切ってます。もちろん気管、食道もこの時点で切断することになります。この時点でちょっと一息、約半分は仕事が終わった、かな。

わかりにくいですね。首なんですが。 首と両肩をはずしたところ。

胴体を持って鳥をぶら下げ皮膚を裏返しに分離していきます。ぶら下げることによって鳥自体の重さで皮膚と肉を分離しやすいし羽毛の汚れも防止できます。背中側、後ろになるにしたがい皮膚と骨が密着し分離しにくくなります。ハト類ではすぐに穴があきます。
分離していくと足が出てきます。膝の部分で切り離します。これも動かしながら関節で切ります。

鳥の重みで剥離を続ける。 これは左足。

さらに皮膚との分離を続けていきます。背中側は分離しすぎると尾羽が抜けてしまいます。尾椎の部分ではずしてやるとよいでしょう。お腹の部分は切りすぎると内臓が出てきます。傷つけないように注意して下さい。最後は総排泄口、直腸の部分を切ることになりますのでウンコで羽を汚さぬようご注意下さい。
これで胴体が本体から離れたはずです。

後ろ足は下腿骨の部分を裏返して筋肉をはずします。ホウ酸を骨に降って戻します。
羽は上腕骨を反転して肘の部分ではずします。鳥によって上腕骨に特徴がある場合があるので、仮剥製にすると取り出せないので先に取り出してるわけです。

胴体がなくなりました。 下腿骨、すねの骨です。

ピンボケですが上腕骨。

ついで首の反転。仮剥製の仕上げ、ほぼ最後の仕事ですね。
気管からの分泌物が口から出て羽を汚すので綿花やティッシュを口に入れておきましょう。
首の骨を引っ張って皮膚をジワジワ裏返していきます。頭骨が出てきてもそのまま慎重に裏返します。鼓膜を切ると目の部分になります。目の回りをこれまた慎重に切って目を取り出します。目を破いてしまうと黒い液が出てきます。なるべくそのまま取り出します、が、私も慣れるまではたいてい切ってしまっていました。
両方の目を取り出し、ついで気管と舌、舌骨を取り出します。

一番のハイライト?頭の反転。 眼も一応保存。

首の骨を頭骨から離します。頭骨の後ろの部分を少し切り広げてやれば脳を取り出しやすくなります。脳は保存ではなく、腐るので取り出すのです。たいてい、溶けたみたいにどろどろになっているので場合によればティッシュのような物をつっこんで拭くようにして取り出します。新鮮な個体ならきれいに取れることもあります。

なお、鳥によっては首から頭を反転できない物があります。カモ類、だったかな?その場合は首の後ろを切開して首、脳味噌、目を取り出します。

これで9割は終わり。

頭を戻す準備。骨にホウ酸をふる。

目の部分に綿花の丸めた物を入れます。実物の目より少し大きめの方が見栄えがするようです。これからが最後のハイライト、裏返した首(頭)を元に戻します。
皮膚が乾燥していると戻りにくいです。その場合は皮膚をぬらしてやると戻しやすくなります。
頭の皮膚が元に戻れば目の周りを整えます。まぶたが重要ですので目はぱっちりと開いてやりましょう。

首に竹ひご等の芯に綿花を巻き付けた物を入れます。胴体も取り出したそれを参照しながら綿花を詰めます。私は胸を縫合しますがそのままにする人もいます。体と羽毛を整えて、紙で丸く固定し陰干しにします。

それらしくなってきました。 適度に綿花、皮膚の内側にはホウ酸。

形を整えて紙でくるんでしばらく陰干し、乾燥させる。

内蔵は雄雌を確認しうちでは腸管内の寄生虫を検索しています。かなりの高率で寄生虫が見つかります。大学の専門機関に送付しています。

わかるかなあ。背中側に腎臓があり、その上に生殖腺。 約3mmありました。種類はさっぱりわかりません。

寄生虫や筋肉の一部は99%アルコールで保存します。DNAサンプルを取るためです。
残りはホルマリンで保存しています。

胃内容物やそのう内の食物は食性調査のために使います。