ミネソタ大学猛禽センター            
THE RAPTOR CENTER AT UNIVERSITY OF MINESOTA


2004年2月29日−3月7日


順不同に、思いつくまま掲載しています。

施設の事や講義内容も書こうかと思っていましたが、通訳をして下さった 赤木先生のHP に詳細に書かれていますのでしいて私が書く事もなさそうです。また、ビデオとノートを取るのに忙しくて写真はほとんど撮っていません。画像をビデオから持ってくるのも面倒なのであんまり内容のないHPになりそうです。
勉強しに行った訳で、観光旅行ではないという事でご勘弁下さい。期待して下さった方、ごめんなさい。




カルチャーショック (という言葉が適当かどうかわからないけど)

具体的な数字は忘れましたが確か放鳥率50%とか。私にとってはとても信じられない数字でした。自分の経験からするとこういう活動で30%を越える数字はヒナの誘拐が多いとか、特殊な事情で ”健康な鳥” の保護が多い施設の成績だと思っていました。
また、猛禽だけで年間700頭という数字も驚きます。確かにここは全米一の症例数らしいですが、各地にも同じような施設があり、全米から鳥が集まっている訳でもないらしいです。猛禽類以外の鳥や野生動物はまた別の野生動物保護センターというのがあってそこで治療されています。

専従職員40名、ボランティア300名、年間予算が1−2億円・・・・・。日本と比較するだけあほらしいし、そもそも日本にそんな施設はありません。ボランティアも診療の補助をする人からリハビリ専門の人、環境教育スタッフ、大工仕事が得意な人、はては、落ちた巣をもとにもどすためにザイルを使って木に登る人までいるらしい。

まず、助けるのかどうか、というところから入ります。野鳥の場合、(希少種や、教育用の鳥にする以外は)100%治せるかどうかが治療開始の判断基準とされます。どこのどういう骨折なら治療しない、等の細かいマニュアルがあるそうです。私の得意な断翼手術なんてここでは考えられないようです。(特に猛禽類は体重が重いので断翼するとバランスが取れないでケガをしたり、足に負担がかかり趾瘤症を起こすらしい。)

治療後のリハビリ技術がまたすごい。具体的な話は割愛しますが、これも経験と実際の研究から運動量やスケジュールが決められており、マニュアルに沿って計画的に行われています。残念ながら野外でのリハビリ訓練は雪のため見られませんでした。
代わりにビデオを見ましたが、ハヤブサなどでは凧に獲物をぶら下げてそれを捕獲させる訓練をしていました。もちろんこれは鷹匠の技術と協力を得て行われている事です。ここの獣医さんも何人かは鷹匠の資格を持っておられるそうです。また、鷹匠のために一定の条件の下、野生の猛禽を捕獲する事も許されているそうです。日本の伝統的な鷹匠技術が風前の灯火になっているのとは大違いです。

最終日にハクトウワシの放鳥という ”ご褒美” をいただき、スタッフの車に分乗させてもらって大きな川の畔に連れて行ってもらいました。見事に(というのは私の感覚、センターとしては当然すぎるぐらい当然でしょうが)飛んで上昇気流に乗りながら円を描いて飛んでいました。翼の骨折で数ヶ月治療、リハビリしていた子だそうです。

以前ゴイサギの骨折を治療したとき、数日間は足にひもを付けて公園に通った事がありました。自己流ながらリハビリとしては間違いがなかったという事かな?でも、その子は何とか水平飛行できた段階で放鳥してしまいました。長期飼育は筋肉が落ちるのでなるべく早く放す、というのが私の感覚でしたが、ここでの理論は落ちた体力、筋力は訓練によって取り戻させた上で放鳥、という、考えてみれば当然すぎるほど当然の事が行われています。

猛禽類の放鳥は思い切りほり投げる。 こんなナンバープレートもある。

これはハッキングという野生復帰のための方法に用いられた小屋。大学の農場にありました。
屋根に作られた小屋で給餌しながら自由に飛ばせて、自分で餌を取れるようになるまで飼育する施設です。訓練中はムクドリなどの有害鳥が近寄らなくって農家によろこばれたとか。




施設の概要

これも大まかなところは 赤木先生のHPをご参照下さい。

受付にいるアメリカキンメフクロウ 入り口にいるシロフクロウ(剥製)

玄関脇の通路で展示されているハクトウワシ。20才以上、だったと思う。

実習用、研究用の標本類。どういう訳か哺乳類もいますね。

外にあるケージ。主に教育用の猛禽を飼育。
そこにいた鳥たち。
あまり関係ないけどドアには必ず車いす用の
ボタンがある。押すと一定時間ドアが開く。

ハクトウワシ。でかい。 チョウゲンボウ。かわいい。

アメリカフクロウ。眠たい? アメリカワシミミズク。いっぱいいた。


入院室

ここで開発したケージです。プラスチック製で洗いやすく、パーツに分かれているので破損の場合もそこだけ交換可能とか。細かいところもいろいろ工夫されています。
刺激で暴れる事もあるので紙を貼って暗くしているのが意外でした。小鳥の場合は暗いとエサを食べないので一日中明るくしています。確かに、人が顔を見せると怖がるのでうちでは目隠しのバスタオルを入り口に掛けて1ヶ所だけ隙間を空け、保温と明かりの目的でライトを付けています。

ある程度治療が進むと、運動が出来るような別の部屋に移しているようです。他の鳥と同居させる時もあるらしいです。もちろんこれも同居可能な鳥のリストというのがあり、それに従って同居させています。


その他いろいろ

足革(ジェス、皮ひも)や体重計が見えました。ついでにリハビリに使う道具の紹介です。もちろん鳥の種類によって使い分けます。
各種止まり木が山積みされていました。その上下にかすかに見えるケージは鳥の運搬用ケージ。ミネソタにはノースウェストの本社があるそうで、鳥の運搬は無料とか。

食事の紹介と与え方、です。マウス類は腸管は取り除きます。



修了式 と お別れ会 の様子です。

所長さんから修了証書をもらう。 スタッフと参加者の皆さん。

ミネソタ州ミネアポリスと言うところにミネソタ大学があり、その構内にあります。
一人の個人の寄付により建物が出来、また年間の運営費1億何千万円だかのかなりの部分も寄付でまかなっているそうです。常勤職員に研修獣医師やボランティアスタッフ(診療の補助、リハビリ、環境教育、運営、などなど、総勢何百人!)などが多数そろっていて年間7−800羽の猛禽類を受け入れているそうです。
具体的な人数や診療件数はビデオの方に入っていますが今は思い出せません。そのうち気が向けば記入します。

講義内容はすべてビデオに撮りましたが片一方で撮影、片一方でノート、さらに実習、で、デジカメでの撮影はあまり出来ませんでした。デジタルビデオから画像を持ってくるのも面倒なので、とりあえず手元にある画像のみでページを作ってみます。


ミネソタ大学 獣医学部 付属動物病院

小動物で診療件数年間3万件、とか。1階が小動物、地階が大動物になっています。
小動物は一般診察室がABC・・・・(10以上だったかな?)あり、それ以外に専門の診察室(眼科、心臓、腫瘍、行動療法などなど)が並んでいます。病院長さんが皮膚科の部屋を指差して ”死なないけど治らない部屋” とおっしゃっていたのがおもしろかった。
夜7時まで受け付けていたかなあ?時間の記憶は不正確です。病院内、どこを歩いても患者さんや先生、学生でいっぱい。学生が症例をいつでも検討できるように廊下にコンピューターが並んでいます。

一般手術室には手術台が何台も並んでおり、スタッフも学生も大勢同時に仕事をしていました。整形外科用の無菌室(?)も何部屋かありました。
急患も受け付けていて検査室や学生も当番性で詰めている(あるいは呼び出される)そうです。

CTは中古で、大動物の一室に間借りしていました。おそらく放射線防御の関係でしょうか?コンクリートむき出しの殺風景な部屋でした。2階の近代設備と比べてちょっと不自然な感じ。

シンプルな入り口 だだっ広い待合室

行動療法の部屋。アメリカのペットの死亡率
1位は問題行動による安楽死、でしたっけ?
エマージェンシーの部屋。何でもすぐに
使えるように準備されている。

一般手術室 クリーンルーム(手前はガラス窓)

広くて迷子になる。 医局、だったかなあ。

わかる人はわかる、牛用の枠場。油圧式。 大動物用のレントゲン室。


知っている方は知っているとおり、アメリカの獣医学教育は臨床に徹しています。大学病院の設備や診療形態も日本とは全く違うようです。
獣医学部、獣医師と、名前は同じでも中味が全然違うと思った方が良いです。良い悪いは一概に言えません。すべてについてケタが違うなあ、というのが私の印象でした。

大学構内もとてつもなく広く、レンガ造りの建物が散在。最終日に雪が降りました。




トレッキング

なんとかというパークに見学に行きました。
ネイチャーセンターの大きなガラス窓の向こう側に、山ほど各種のエサが積んだりぶら下がったりしています。野生動物に対する給餌の是非はどうなんでしょうね。確かにいろんな鳥やリスが見られて楽しかったです。足跡もいろいろ教えて頂きました。


メープルの木です。ご存じの通り、メープルシロップの原料。ただ穴を開けてこれを打ち込むだけです。ちょっとなめただけでもすごく甘かった。センターお手製の(といっても煮詰めるだけらしい)シロップをいっぱい味見させて頂きました。

周り一面ただの原野なのに、フェンスで囲ったドッグランがありました。なんでだろう?伝染病予防?迷子防止?我々を見て犬連れのおばさんが寄ってきました。挨拶をするなりポケットからドッグフードを出して渡されました。その犬にあげて欲しい、という意味です。要するに、しつけの最中で、知らない人に慣れさせるためでしょう。いつ、どんな場面でもしつけを考えているんですね。そのくせ、片一方でアメリカのペットの死亡率第1位が安楽死とは不可解。


天然物のカミツキガメ(ですよね?)とアライグマ(剥製)。日本で帰化してたいへんな事になっている、って説明しようとしたがうまく伝わらなかったみたい。
見ての通り、タイガーサラマンダーというサンショウウオ。日本にはオオサンショウウオがいて1m30cmあるって自慢して来ました。これは伝わったみたい。こんな所で何で見栄をはらんとあかんねん。




楽しい飛行機、その他おまけ

関空からミネアポリスへの直行便が無く(あるいは適当なのが無く)、デトロイトで乗り換えてミネアポリスへ行く行程でした。地理的には行き過ぎて戻る形です。
出発時間や到着時間は現地時間で書いているので結局何時間乗るのか、さっぱりわかりませんでした。(あとで時差を考えれば何となく解ったんですけど。)おそらく行きは12時間、帰りは14時間ぐらい乗ったのかなあ。

空港内を走る”電車” 見てのとおり軍用機


ミネソタもデトロイトもとにかく大きな空港でした。空港というよりただの広大な空き地。関空や成田の着陸料、滑走路の数などがよく新聞に載っていますがこんな所と競争できるわけ無いですね。


客室乗務員にすごく太ったおばちゃんがいました。肥満はアメリカの国民病らしいですし、肥満と言うだけでクビには出来ないでしょうが狭い機内の狭い通路ですので緊急時に支障は出ないんでしょうかね。また、ミネソタへの飛行機ではすごい年配のおばちゃん。コーヒーを配っていたけど手が震えていたような。
アメリカでの空港のチェックは靴まで脱がされました。入国時も結構いろいろしつこく聞かれました。

帰りは窓際の席で飛行コースはアラスカをとおっていたらしい。凍った川、海、山地と林がすごくきれいでした。時間の感覚がなかったけど機内はお休みの時間らしく、ライトを落として、窓もブラインドをおろすように言われていましたが、隙間からずっと下を眺めていました。マッキンリーでも見えればと思いましたがそれは解りませんでした。


BSEの関係でビーフジャーキーは持ち帰り(国内持ち込み)出来ない、と聞いていたので買いませんでした。でも、空港の税関では荷物のチェックは全くありませんでした。新婚旅行ではカバンを開けてチェックしたように思いますが人相が良いからか、怪しいところからでないからか、ほとんどの人はそのまま通っていました。最近はそうなんでしょうかね。

モールオブアメリカという全米1のショッピング街、らしい。中央に遊園地とか水族館、
4つのデパートがコーナーにあり、いろんな店が周囲に並んでいる。


ということで新婚旅行以来2度目の海外旅行も無事終了、たいへん楽しく勉強させて頂きました。猛禽センターのスタッフの皆様、通訳の赤木先生、現地で通訳して下さった千尋さん(娘と同じ名前でよけいに親近感が・・)、大阪からご一緒だったMさん、参加者の皆様、ありがとうございました。


肝心のお勉強についての報告がほとんどありませんねえ。DVDには入っており、順次見なおしつつ活字に落としています。頭の中にもしっかり入れてこれからの救護活動に応用していきたく思っています。