関西自然保護機構          
2007年9月





図4 キクガシラコウモリ
2006年10月22日  豊能鉱山
図9 テン
2007年1月26日 川浦鉱山


図5 テングコウモリ
2006年10月3日 豊能鉱山
図10 アナグマ
2006年8月19日 川浦鉱山


図8 アライグマ
2006年8月18日 川浦鉱山
図11 タヌキ
2006年12月5日 川浦鉱山


                                ― 61 ―










三重自然誌の会
2007年

三重県中部の隧道に生息するコウモリ

浦野 信孝


Bats inhabiting unused tunnels in central Mie Prefecture

Nobutaka URANO

はじめに
三重県の隧道に生息するコウモリについては、すでにいくつかの報告がある(例えば、佐野・清水,1999;佐野,20012004).そのなかで佐野・清水(1999)は、一志郡白山町上ノ村(当時、現在は津市白山町上ノ村)にて、キクガシラコウモリ Rhinolophus ferrumequinum、モモジロコウモリ Myotis macrodactylusの生息を報告している.今回筆者はその隧道を再調査するとともに、付近に散在する隧道を合わせて調査し、新たなコウモリの生息を確認したので報告する.

調査地および方法
調査は2007726日および200782日に実施した.三重県津市白山町、三重県伊賀市北山に散在する隧道に日中、懐中電灯を持って入り、コウモリがいた場合は種類と生息数を記録した.

結果と考察
調査結果を表1に示した.9カ所の隧道のうち、6カ所でキクガシラコウモリあるいはモモジロコウモリを確認した.個体数については,隧道A,C,E,F,Gでは17頭であったが
隧道Dではモモジロコウモリのコロニーを確認した(図1).隧道Dの調査時、一部のコウモリが出口付近へ移動し,また,隧道EFで発見されたコウモリは飛翔状態にあったので、これらで見つかったコウモリは隧道Dからの移動個体を含む可能性がある.

隧道Dには大量のグアノの堆積が数カ所に見られ、多数のコウモリが生息している事が推測された.隧道内に見られるこれらのグアノが、どの種類のコウモリに由来するのかは特定できなかった.今回はモモジロコウモリが多数見つかり、このコロニーの下にもグアノの堆積を認めたが、時期により生息するコウモリが異なっている可能性も考えられる.

この隧道の前後にもほぼ同じ長さの隧道が隣接するが、これらにはグアノはほとんど認められなかった.トンネルの形状、付近の環境はいずれも類似していると思われるが、隧道Dのみに多数のコウモリが生息しているのは注目に値する.隧道内の微気象がそれぞれのトンネルで異なっているのかもしれない.

今後も調査を継続し、これらの隧道におけるコウモリの利用状況を明らかにしていきたい.



表1 各隧道におけるコウモリの観察数

調査日 調査地 長さ コウモリの観察個体数
キクガシラ
コウモリ
モモジロ
コウモリ
7月26日 白山町佐田 隧道A 350m 1
7月26日 白山町上ノ村 隧道B 350m    
7月26日 白山町上ノ村 隧道C 800m   1
7月26日 白山町垣内 隧道D 900m 1 445
7月26日 白山町垣内 隧道E 730m 3 2
7月26日 伊賀市北山 隧道F 3400m 5 2
8月2日 伊賀市北山 隧道G 300m    3
8月2日 伊賀市北山 隧道H 80m    
8月2日 伊賀市北山 隧道I 50m    


図1 モモジロコウモリのコロニー



引用文献
佐野 明.2001.三重県における洞穴性コウモリ4種の記録 2000年および2001年の記
録.三重自然誌,(7)91-93
佐野 明.2004.三重県における洞穴性コウモリ4種の記録 2002年および2003年の記録.三重自然誌,(8/9/10)15-18
佐野 明・清水善吉.1999.三重県における洞穴性コウモリ4種の新たな分布記録.三重自然誌,(5)83-86

連絡先:浦野動物病院