カマイルカの解剖             


     2005年1月28日


ほねほね団でカマイルカの解剖があるというので見に行ってきました。


思っていたより小さい。
見れば見るほど流線型で、無駄な出っ張りは全くありませんね。


目と耳。
耳、わかりますか?目の右下約30度ぐらい、ゴミみたいな点です。
イルカは音は下顎骨で聞くのです(後述)。

カマイルカのカマは背びれの形、鎌からでしょう。


見ての通り、口と外生殖器。
歯を見て若いのかなあ?と思ったけど年は結局わからず。(聞きそびれました。)

生殖溝といわれる溝。前部が膣で後部に肛門?
その両側の短い溝には乳頭が埋まってる(はず)。


皮むき中。
皮下脂肪がすごい。いわゆるコロ、ですね。皮膚そのものは薄くてはっきりした区別はわかりませんでした。
先日のアザラシでははっきり皮膚、という感じで靴や服の材料に出来るのも納得でしたがイルカでは無理とちゃうかな。


右は噴気孔に指を突っ込んでいるところ。
休日なら解剖に参加して細かく追求したかったけど、平日で時間に追われていたので撮影だけで辛抱していました。


尾は骨はありません。最後はスジばっかりで、硬くて剥きにくそうでした。

背びれは内部構造がほとんどないみたいでした。棘(きょく)突起のすぐ上にありますがくっついていません。あまり動かす必要もないので筋肉も入っていないのか、脂肪ばっかりみたいでした。


イルカには頭部には、メロンと呼ばれる脂肪のかたまりがあります。このかたまりがイルカが音を発するときに重要な役割をしているそうです。
まず、メロンで音を共鳴させ、それを音波に変え、噴気孔から音波を出すそうです。また、音を聞くときは耳で聞くのではなく、下顎骨の骨振動によって音をキャッチして脳へ伝達される仕組みになっています。このような音波探査システムを『エコロケーション』と言うそうです。また、陸上の生物ではコウモリがイルカと同じこのような能力をもっています。(某HPより無断引用。)
イルカ、メロンで検索していただくといっぱい出てきますので、あとはご自分でお調べ下さい。

ところで、イルカの頭骨というのは左右対称ではありません。鼻の部分でどちらかにラインが偏っているのです。そのつもりでこのメロンを観察すると右が大きいように思いますし、その話題で盛り上がっていたけど、ほんまかな。ネットで調べた限りではそこまで言及したページは見つかりませんでした。ということは、このページが日本で初めてメロンの偏りを明らかにしたページ!!?


背中の、棘突起横の筋肉。いわゆるロースの部分。骨格標本には必要ないので除肉しているというより、なんか「不純な」動機があってきれいにはがしているような気もしました。わざわざきれいなコンテナも用意していたしなあ。

右は両側の筋肉がはずされつつある状態。真ん中に残っているのが棘突起。全身筋肉で、それが腱になって尾につながっているような感じでした。


(以降の写真は、デジカメの電池がほとんどなくなり色がおかしいです。)
右は寛骨、すなわち骨盤の名残り。背骨からも遊離して筋肉の間に埋まっています。足の骨は痕跡もありません。生殖溝の横、やったかなあ?


ヒレをはずす。ひれはそれとなく前足風です。左写真のように、肩甲骨が肋骨にくっつく姿は四つ足動物風。
団長がヒトとの比較をしてくださっています。でも、イルカというよりオットセイ風?(失礼しました。)


下顎の間から舌を出して遊んでいる構造を調べている。ほとんど舌の下のビロビロがくっついていて舌を自由に動かす構造にはなっていないみたい。そういえば舌なめずりをしているイルカの写真なんて見たことないなあ。

右は腹側の筋肉を除去したところ。中がまだ凍っていてジャリジャリでわかりにくい。見えているのは小腸。


解剖図にかぎらず図(鑑)というのはたいてい頭が左側ですね。これも原図は逆でしたが無理に頭を左へ持って行ったのでかえって見にくいでしょうか?
とにかくお腹の中は腸だらけ。魚は消化も良さそうですのに何でこんなに長い腸が必要なんでしょう?これでは草食動物を思い出してしまいます。雑食の犬でもこんなに長くない。なんか理由があるんでしょうけど思いつかないなあ。

副団長が計ったところ15m(18mでしたっけ?)あったとか。


右側の丸いの(1対あるもの)が腎臓。パッとみてあんまりでかいのでびっくりしました。海に住んでいて海水を飲み込むのでそれを処理するため腎臓が大きい、って説明したらさすが獣医さん、って言われました、が、ほんまかいな。あんまり私の言うことは信用しない方がいいと思いますよ。
左に肝臓の端っこ、真ん中の棒みたいなのは胃からつながる十二指腸部分です。

腎臓を切ってみました。なんやら、かわってるなあ。牛の腎臓に似てなくもない。


よってたかってばらしている図。
皆さん、楽しそうですねえ。


午後の診療があるので、残念ながら時間切れでここで帰りました。
横隔膜や肺も見たかったですねえ。
知識として哺乳類というのは理解していますし肉も赤い、骨の構造も内臓も何となく哺乳類ですが姿形はどう見てもカツオ様です。哺乳類が特殊化して結果的に高速で泳ぐ魚、カツオなんかに似てきたのかな。これも収れん、って言うのかなあ。
アザラシともかなり違うので進化の系統はちょっとちがうんでしょうね。

骨は専用の砂場があるのでそこに埋められたはずです。6ヶ月ぐらい置いておくのかな。つい先日、別のイルカ(マイルカ、だったかな)の発掘があり、ほねほね団に掲載しましたので読んでみて下さい。

ちなみにナガスクジラが大阪湾に上がった時は2年ぐらい埋められていたのかな。友の会行事で発掘を手伝いましたがそれでもまだ肉が残っていました。下顎骨は100kg以上あって置くところが無く、しばらくバックヤードに転がっていました。さすがにこの大きさの骨では野良犬、野良猫も持って行きませんね。